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実例から学ぶ税務の核心〈第58回>配偶者居住権と小規模宅地特例

2021.08.16

事務所からのお知らせ熊本職員コラム

週刊税務通信 No.3666 令和3年8月16日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。
実例から学ぶ税務の核心
~ひたむきな税理士たちの研鑽会~
<第58回>
配偶者居住権と小規模宅地特例
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾
1 配偶者居住権と小規模宅地特例
1)配偶者居住権の基本
白井)  民法改正を中心とした小規模宅地特例をテーマに議論してみたいと思います。まず,配偶者居住権(民法1028)が設定された場合について検討してみましょう。
村木)  配偶者居住権について再確認すると,夫の居住用の土地家屋を先妻の子が相続するが,後妻に終身の居住権を与えたい,という場合に設定するのが典型です。
岡野)  配偶者居住権は遺産分割協議や遺贈・死因贈与契約,家庭裁判所の審判で設定できます。後妻には一生涯にわたり無償で家屋を使用・収益する権利が生じます。所有権と居住権を分離して相続することになり,各々が遺産として相続税を申告するわけですね。
2)建物の一部が賃貸されている場合の取扱い
濱田)  国税庁からは質疑応答事例が公表され(相続税及び贈与税に関する質疑応答事例(民法(相続法)改正関係)について(情報)),建物の一部が店舗として利用されている場合や,賃貸されている場合の税法の取扱いが明らかになりました。
内藤)  民法上,配偶者居住権は建物全体に及びます(民法1028)。登記も建物全体で一つの登記になります。当然,配偶者居住権に基づく敷地利用権も敷地全体に及びます。それは建物の一部が店舗になっていたり,他人に貸し付けられていたりしても同様です。
白井)  となると,貸付部分にも配偶者居住権の権利が及ぶわけですね。しかし,賃借人はまさか配偶者居住権が設定されて自分が退去するようなことは想定していません。所有者と契約しているのですから,相続があれば建物を相続した相続人に契約が承継されていると認識します。
村木)  そうですね。相続開始前から貸し付けられている場合,事実上,後妻は賃借人に権利を主張することができません。賃借人に立ち退いてもらうことはできないため,貸付部分に対応する敷地について,税法では,配偶者居住権や敷地利用権はないものと考えます。
岡野)  この点については異論を述べている方もいるようですが,先日,税務通信で香取稔先生が同じ結論を述べてくださっていますね。
(以下略)

(熊本本部スタッフ)