2021.03.08
事務所からのお知らせ熊本職員コラム週刊税務通信 No.3645 令和3年3月8日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。
実例から学ぶ税務の核心
~ひたむきな税理士たちの研鑽会~
<第53回>
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾
1 はじめに
村木) 令和3年1月15日に突如として,「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」が出されました。テレビ報道などでも扱われ,話題になりました。
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)
令和3年1月 国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
白井) 在宅手当が課税されないという報道もあったようですね。
内藤) 流石にちょっとそれは誤解がありますが,FAQの文言を独り歩きさせたのでしょうね。
岡野) 企業だけでなく税理士事務所でもリモートワークが進みつつある現在,確認必須のFAQですね。
濱田) では,内容を順番にみていきましょうか。
村木) なお,2月5日に問3注2の一部訂正新旧対照表が出ていますので念のため。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0021001-131.pdf
2 在宅勤務手当
〔問1〕 企業が従業員に在宅勤務手当を支給した場合は,従業員の給与として課税する必要はありますか。
内藤) 実費弁償の場合は給与課税の対象になりませんが,それ以外は返還・精算されない限り,給与として課税されるということで,当然の内容ですね。ただ,回答の書き方として,課税の原則例外が逆転していて,課税されない場合を先に書いてある点,ちょっと気になりますね。
白井) 一般人向けに書いたのでしょうね。しかし,我々税理士の判断構造から言えば,逆なので,仰る通り,注意すべきですね。
岡野) なお書きで,「在宅勤務手当」という言葉を出して,名称でなく,内容により取扱いを切り分けるべきことを示している点は,注意すべきですか。
濱田) なるほど。他になにかありますか。
村木) 「在宅勤務に通常必要な費用」と限定している点は,当然のようですが注意すべきでしょうね。なんでもかんでも在宅勤務費用を認めるという青天井ではないわけです。
内藤) 後は既に触れたように,返還・精算を行わなければ,課税されるよということで,渡切り交際費と同様に考えてよいのではないかと思います。
ポイント 判断構造として,現物給与課税が原則だが,回答は例外許容から書いてあるので注意が必要。
3 在宅勤務に係る事務用品等の支給
〔問2〕 在宅勤務を開始するに当たって,企業が従業員に事務用品等(パソコン等)を支給した場合は,従業員の給与として課税する必要はありますか。
岡野) これも,問1の考え方で考えれば,当然ながら,貸与なら課税されず,支給して,パソコン等の所有権が従業員に移転する場合には,現物給与課税となるわけです。
村木) ただし,ここでは,「支給」という表現をしていても,縛りをかけて,勝手に従業員が処分できず,業務利用しなくなったら返還しろという規約を設けていれば,貸与扱いにしてくれることを示してくれていますね。
白井) 先程も出てきた話ですが,言葉尻にとらわれず,実態がどうなっているかで判断すべきということなんでしょうね。
内藤) このFAQでは出てきていませんが,現実の管理としては,貸与するパソコン等に管理タグを貼る,管理台帳を作る,従業員との覚書を作るなどが実務対応になるのでしょうね。
濱田) なるほど。事業者側も管理台帳に番号を付して,管理タグと照合できるようにしておくというところでしょうか。
ポイント パソコン等は貸与であれば給与課税されないが,支給の場合でも貸与扱いしてもらえる場合がある。
(以下略)
(熊本本部スタッフ)