2021.05.06
事務所通信熊本相続登記と住所変更登記の義務化、所有者の連絡先情報の把握のための法案が2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において決定され、2021年4月21日国会での法案成立をしました。
今回の法改正により所有者不明土地問題の解消が期待されています。
所有者不明土地とは登記簿謄本等で所有者が直ちに判明しない、あるいは判明しても連絡がつかない状態の土地のことをいいますが、所有者不明土地は直ちに売却が出来ない、土地上に建物を建築することにも障害が生じます。また不法投棄の原因にもなっており、土地の有効活用の妨げとなっており経済的な損失が生じていると言われております。
日本には所有者不明土地が数多く存在し、国土交通省の平成28年の地籍調査によりますと、登記簿上で所有者の存在が確認できない土地の割合は20%程度、探索の結果、最終的に所在が不明な土地は0.41%あると言われており、その原因として、約66.7%が相続登記されていない、約32.4%が住所変更登記されていないことが上げられています。
今まで相続登記には期限がありませんでしたが、法改正後に相続により不動産の所有権を取得したものは、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の相続登記をしなければならず、期間を過ぎた場合には10万円以下の過料の対象となります。これは遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)より所有権を取得したものも同様です。
また遺産分割がまとまらず速やかに相続登記をできない場合には、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務は免れる制度「相続人申告登記(仮称)」が設けられました。この制度が利用された場合には、法務局(登記官)が登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録します。
上記の義務化に伴い遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)の所有権の移転登記と法定相続登記後の遺産分割、相続放棄などの事由による所有権更正登記について不動産登記上、他の相続人等との共同申請を求められていたもの簡略化されて、登記権利者が単独で申請することができるようになります。
登記上の所有者の住所についても義務化されます。所有者の氏名、住所等について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければなりません。期限を過ぎた場合は5万円以下の過料の対象となります。
新たに不動産の所有権を取得する個人は、名義変更登記時に生年月日等の情報の提供が義務化されます。個人の生年月日は登記簿には記録されませんが、法務局内部において登記官は、氏名、住所、生年月日などの情報を元に住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会及び検索用のキーワードとして利用される予定です。
所有者が会社など法人であるときは、商業・法人登記のシステム上の会社法人等番号が登記簿に記録されます。
不動産を取得する者が海外居住者の場合には、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称等の申告及び登記が必要となります。連絡先としては第三者も指定することができますが、その第三者は日本国内に住所を要することが要件とされています。
今回の改正法は2024年度を目途に施行される予定となっております。今まで相続登記や住所変更登記をされていない方も施行後は対象となってまいりますので今一度登ご確認を宜しくお願い致します。
ご不明な点等ございましたら、各担当者へお気軽にお問合せ下さい。
【熊本本部 坂田 佳太】