「配偶者居住権」2020年4月~スタートします
配偶者居住権とは、相続開始時に、被相続人の配偶者が被相続人の持ち家に住んでいた場合、相続開始後にその家を他の相続人等が取得しても、終身または一定期間、被相続人の配偶者が無償で住み続けられる権利です。
配偶者居住権創設の背景
現在の法令の下では、被相続人の死後に配偶者が被相続人の持ち家に住み続けたい場合には、被相続人の持ち家を配偶者が相続することが通常ですが、遺産分割での相続分の関係から、その後の生活資金に充てるための現預金をほとんど手にすることが出来ない場合がある等の問題がありました。そこで、2018年7月に民法の改正が行われ「配偶者居住権」が創設されました。
成立要件
- 相続開始時点で被相続人が所有する建物に居住している配偶者であること。
- 以下のいずれかにより配偶者が配偶者居住権を取得したこと。
- 遺産分割協議による場合
- 遺言による遺贈の場合
- 家庭裁判所の審判により定められた場合
存続期間
配偶者の「終身の間」とされています。但し、遺産分割の協議、遺言、家裁の審判において別段の定めがある場合は、その定めによるところになります。
評価方法
- 配偶者居住権
建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数―存続年数)/残存対応年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
- 配偶者居住権が設定された建物の所有権
建物の時価-配偶者居住権の価額
- 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利
土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
- 居住建物の敷地の所有権
土地等の時価-敷地の利用に関する権利の価額
配偶者居住権の効力
- 登記及び第三者対抗要件
- 居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定登記の要請に協力する義務を負います。
- 上記登記がなされた場合、配偶者居住権は第三者対抗力を付与され、配偶者は居住建物の占有に関し、妨害停止・返還請求権を取得します。
- 居住建物の使用・収益等
- 配偶者は居住建物の使用・収益権を取得する一方で、その行使には善管注意義務を負います。
- 配偶者居住権は譲渡できません。
- 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築・増築をし、または、第三者に居住建物の使用・収益をさせる事はできません。
- 配偶者が、上記ⅰ・ⅲに違反した場合居住建物の所有者は、催告のうえ、配偶者居住権を消滅させることが出来ます。
- 居住建物の修繕
- 配偶者は居住建物の使用・収益に必要な修繕をすることができます。
- 一方居住建物の所有者は、配偶者が相当の期間に修繕をしない場合は、自己の所有物ですので、修繕をすることが出来ます。
- 居住建物の費用負担
- 居住建物の通常の必要費(土地・建物の固定資産税等)は配偶者に求償することができます。
- 居住建物の返還
【熊本本部 内田 裕子】
PDFはこちらをクリック