2021.04.05
事務所通信熊本相続の直前で購入金額と相続税評価額(財産評価基本通達による評価)との差額の大きい物件を購入し、財産評価基本通達による評価を行うことにより相続税対策を行った事例について、相続発生後に売却を行っていないにも関わらず、鑑定評価額での評価による更正処分等を受けた事例が発生しました。その後、更正処分等の取消請求の裁判を行いましたが、令和2年11月12日に東京地裁が請求をいずれも棄却する判決を下しました。
令和元年判決でも同様の事例が発生していますが、令和2年判決と異なる点は、対象となる物件のうち1つが売却されていたことにあります。令和元年判決では、売却により取引価額(時価)が明らかとなり、相続税評価額との乖離が大きいことが税務当局に指摘されたことが問題となりました。
今回の令和2年判決では、令和元年判決のように相続直後に売却を行うことによるリスクの他、相続直前に購入することが、購入価額と相続税評価額の乖離を明らかにしてしまうことについても注意が必要となる事例となりました。
令和2年判決では、相続直前に賃貸住宅を銀行からの借入15億円で購入して相続税対策を行い、財産評価基本通達に基づいて約4億7,000万円と評価して申告した所、税務署から鑑定評価額10億4,000万円との間に大きな乖離があり、特別な事情があると認められるとして相続税につき鑑定評価額10億4,000万円での更正処分を受けました。
被相続人は、不動産を購入した主たる目的は収益性の確保等としていましたが、銀行支店の担当者が作成したメモには「相続税対策」等の文言もあり、納税者の租税回避の意図を立証する資料として使われてしまいました。
上記の事例により、賃貸不動産を取得する場合には、
を考慮した上での相続税対策が必要となります。
ご不明な点等ございましたら、各担当者又は弊社までお気軽にお問合せ下さい。
【熊本本部 杉山 亜夢里】